−微笑んで、オヤスミ−

「ん…? 何だ、テメエは!?」

俺は金持ちの家から仕事を終えて帰る途中、あいつに会ったんだ。いつものように睨みを利かせたけど、あいつ、

「あ…ええと、初めましてグリフィン。私は天使のウィニエルといいます」
カナリアが歌う声であいつは頭を深々と下げて一礼し、それから顔を上げてふわりと笑った。顔ははっきり言って悪くない。身体だって、出るとこ出て引っ込んでるとこは引っ込んでるし、悪くない。どちらも好みな方だ。

だが、

とりあえずここは二階で、俺は一階の屋根に飛び移る寸前。けど、あいつの足元には何もなくて、俺と同じ高さに目線を合わせ、確実に宙に浮いていた。
それだけじゃない。あいつの背に真っ白な翼が着いていて、それが時折振れる。

その翼はまさか本物…?

瞬時に思った。
明らかにこの女はおかしいって。

「……はぁ?」
俺はまたあいつを睨みつける。けど、あいつは全く怯むことはなくて、
「あの〜…グリフィン。あなたに…」
ウィニエルは俺の方へと近づいてきた。
「おい! 静かにしねぇか。ここの家の奴等に聞かれたらどうすんだ!」
俺は家の中へ声が聞えないように、あいつに向けて言い放った。
「え? あ、はい……」
俺の言葉にウィニエルは両手で自分の口を塞いだ。
「それと、ちょっと向こうの方、引っ込んでろ! 目立ってしょうがねえ」
俺はこちらに尚も近づいてくるあいつを払うように手を何度か振った。
「………」
ウィニエルは俺に指定された通りに建物の影に姿を隠した。

「と、金目のもんは全部入れたな…」
俺は無事に家から脱出し、あいつが隠れている場所まで来て、しゃがみ込んで荷物を確認する。
「あの…一体何を…?」
ウィニエルが荷物を確認する俺の背後から身を乗り出して声を掛けてくる。そういやすっかり忘れていた。
「るせぇな、見て分かんだろ。黙ってろ」
俺は荷物の確認を済ませて、歩き出す。歩くのは下手に走って怪しまれないためだった。

「ここまで来りゃ大丈夫か…で、なんなんだ、お前は? 人の仕事をド派手な風体で邪魔しに来やがって」
歩いてる間仕事に入った家の方には一度も振り返らなかったが、後ろにあいつがついて来ているのはわかったから、俺は歩いたまま告げた。
「はい、グリフィン。実はあなたにお願いしたいことがあって来たのです」
あいつの声が背後から聞える。
「お願い?」
俺は足を止め、歩いて来た道を振り返った。
「きゃっ……痛っ…」
あいつの声と共に俺の胸に鈍い衝撃が伝わる。そして、その後あいつが手をついて尻餅をついた。
「……お前…」
どうやらウィニエルが俺の胸に額を打ち付け、その反動で倒れたようだ。俺はそれを冷ややかに見下ろした。
「ご、ごめんなさい…近づき過ぎたみたいです」
さっきまで飛んでいたはずのウィニエルは額を擦りながら俺を見上げて謝る。家々から漏れる光に照らされた白い羽根が地面の土で汚れていた。服も手を付いた時に汚れたのか袖部分が所々茶色い。なのに、あいつは立ち上がろうともしない。

変な奴。

第一印象はまさにそれ、だった。

「ほら…」
俺はつい、手を出してあいつの腕を取る。
「あ…すみません…っ…」
ウィニエルは痛がるように顔を顰めた。
「ん? どした?」
「い、いえ…こんな風に転んだことなくて…ちょっと吃驚しただけです。結構痛いんですね…」
俺が訊ねるとウィニエルは腕や尻を擦りながら真面目な顔で応えた。
「………」
俺は言葉を失う。

やっぱり、変な奴だ。

俺と、あいつの出会いはそんな感じだった。

* * * * * *

あれからどれだけの時間が経ったんだろう…?

「なぁ、ウィニエル」

俺は依頼された土地に向かう途中、立ち寄った宿で仰向けで寝転がりながら同行していたあいつに声を掛ける。

「はい」

ウィニエルはすぐに突っ立ったまま俺を見下ろして出会った頃と変わらない笑顔で俺に応えた。

「今、どれくらいの年月が経ったんだっけ?」
「え? あ、ええと…そうですね…今は……3年程でしょうか」
俺の問いにあいつは顎に手を当てて宙見上げて告げる。
「もうそんなに経ってるのか…っつかさ…」
俺は身体を起こし、眉間に皺を寄せあいつを睨みつける。
「はい?」
ウィニエルには俺の睨みも効かないのはわかってるが、どうしても言わなければならないことがあった。
「さっきのあれはどういうこった!?」
俺は声を荒げて、あいつに言い放つ。
「え…? あれ…とは…?」
ウィニエルは何のことかと首を傾げる。全くわかってないあいつに妙に苛ついた俺は。
「ここに正座しろ!!」
「は、はい!」
俺の怒号であいつは床に正座をする。
「…あ、あのぅ…」
先程まで俺を見下ろしている天使が今度は俺を見上げている。おずおずと俺が怒ってることにやっと気付いたようだった。

「お前……戦闘を舐めてんのか!? 戦ってる最中に俺の前に出てくんじゃねえよ! 邪魔で戦い辛いだろうが!!」
俺の声があいつの耳に響いたのか、ウィニエルは目を固く瞑って微かに震えた。
「だ、だって…あれは…」
ウィニエルのエメラルドの瞳が僅かに潤む。睨みは効かないが、大きな声は効き目があるらしい。
「だってもくそもねえよ! お前は後ろからの援護しかしねえんだろ!? 姿現して俺の盾になろうなんてする馬鹿どこに居るっつんだよ!?」

俺は、ただ、あいつが傷つくのが嫌で。

「だって…あの時あなたは麻痺してて動けなくて…」
ウィニエルの眉尻が下がる。

そう、この宿に着く少し前、俺は敵に襲われていた。麻痺効果のある攻撃をくらって、不覚にも麻痺しちまって、動けなくなって追い討ちを掛けるように敵が向かってきた。
その時、あいつがでしゃばって、あろうことか俺の前に盾になろうとした。
俺は咄嗟にあいつに回復するよう命令して、直ぐ回復させて、あいつを後ろに引き下がらせた。

「だからさっさと回復しろって言ったんだよ」
「だから、回復したじゃないですか」
俺が軽くあいつの頭を小突くと、ウィニエルは頬を僅かに膨らました。

ウィニエルの援護はお世辞にもうまいとは言えない。死にかけたことは無いにしても、回復・防御・攻撃の補助のタイミングが悪すぎる。だから俺は常々命令して援護をさせている。
言わないでもやってくれる日が来るといいんだが、3年経っても駄目らしい。

「…お前…天使失格…」
俺は目を細めてあいつを見た。
「ごめんなさい…あの時は無我夢中で気が付いたらあなたの前にいて…」
ウィニエルは膨らましていた頬を窄め、今度は俯いてしまう。
「……ま、もう過ぎたことだからいいけどよ…」
俺は緩みそうになる口を片手で覆いながら空いた手であいつの頭を乱暴に撫でる。

悪い気はしなかった。

あいつが俺の為に身を投げ打ってくれたんだから。悪い気がするわけがない。
俺はもう随分前からウィニエルに惹かれてるんだから。恋だとかどうだとかはわかんねえけど、多分、俺は。

だから、尚更あいつが俺の為に傷つくなんて嫌で。

「…ごめんなさい…私…まだ半人前で…」
ウィニエルは俯いたまま頭を上げようとしなかった。
「まぁ、そうだな。お前はまだ半人前だよな」
「…はい…」
俺の言葉にあいつは肩を大きく落した。

半人前。

この言葉はあいつにとって禁句だった。と言っても怒るわけじゃなくて、その逆で。

あいつは馬鹿が付く程真面目な奴で、何でも一生懸命過ぎて時々周りが見えなくなる。何度俺を助けようと戦闘中に姿を現したことかわからない。俺の仕事に関しても長い時間説教たれるから、途中で俺が、

『頭固ぇんだよお前、こんなこともわかんねえのか? まだ半人前だな』ってぶっきらぼうに言った途端あいつ固まっちまって、

『…うう…ど、どうせ私はまだ半人前ですよっ!! でも、そんな風に乱暴に言わなくたっていいじゃないですか〜っ…!! うわぁああん!!』って泣き出したんだ。

いや、あれには正直言って参った。驚いたなんてもんじゃない。いっつもへらへら…いや、柔和か。柔和なあいつがあそこまで取り乱すとは予想してなかった。宥めるのに何時間掛かったことか。

半人前といつも言われてたわけじゃないらしい。ただ、その言葉自体が嫌いみたいだ。いつも周りから期待されてて、自分も頑張ってはいるが、それでもその期待に添えない自分がいて、自分で半人前だと思ってるのに実際に口に出されると辛い、と。
俺は「思い込みが激しいだけじゃね?」と言ったけど、あいつは「私が半人前だから駄目なんです」って抜かしやがった。
後ろ向きな奴か? と思ったけど「一人前になれるように頑張りますからどうか宜しくお願いしますね」なーんて、笑顔で言ってくれちゃって。俺はそれ以上何も言えなくなった。
同時にこいつが一人前になれるよう手助けしてやろうとも思ったんだ。あいつの思い込みの激しさも直せたらいいな、とも思った。

あいつ、何か痛くて。

そこまで思い詰めなくても誰もお前を責めたりしないのに。

って言えば良かったけど、俺は馬鹿だから、気の効いた言葉が言えなかった。でも、多分、それを言ってたとしてもあいつは同じことを言ったんだろうな。自分が半人前だから駄目なのだ、と。
だから、俺は気長に付き合うことにした。あいつの傍に居て、気長に治してやろうって。一人前にしてやろうって。俺も完全ではないから、こうして時々あいつの耳障りなことを口にしちまうけど。
「そこまで落ち込まなくてもいいんじゃねえか? 俺がちゃんと一人前にしてやるし」
俺はあいつを励ます。
「……はい、お願いします。グリフィンだけですから…」
ウィニエルが顔を上げて、まじまじと俺を見上げる。

「え?」

突然ウィニエルに見つめられた俺は、頬が次第に熱くなってくのを感じた。

俺だけってどういう意味だ?

と、思ったのもつかの間。

「そんな風に言ってくれるのはグリフィンだけです。他の勇者達は皆何も言ってくれませんので…」
ウィニエルは言い終えると可愛く笑った。
「何だよそれ…それじゃまるで俺が天使遣いが荒いって言ってるみたいじゃねえか」
俺はへそ曲がりだから、口を尖らしてそんなことを言葉にしてしまう。
「えっ!? いいえっ!! 違いますっ!! 私、嬉しいんですっ!!」
あいつは首を横に数回振ってから俺を再び見上げ、真っ直ぐに視線を絡ませた。

「……ふうん…」
俺は余裕を持って応えたように振舞ったが、頬を冷汗が伝ったのはわかった。

俺の睨みはあいつに効かないが、あいつの視線は俺には絶大に効果があるらしい。
「? …グリフィン?」
ウィニエルは笑顔で首を傾げる。あいつの笑顔は子供のようで、大人のようで、どうにも不思議に惹き付けられる魅力がある。

ウィニエルの歳は? って以前聞いたら、あいつ。
天使の歳の取り方と人間の歳の取り方は違うって言って、一から事細かに説明してたっけ。んな説明なんてどうでもいいっつうのに、何か一生懸命話し出すから最後まで聞く羽目になって。
まぁ、あいつのことまたちょっと理解出来たから良かったんだけど。

で、結果を言っちまえば、ウィニエルは人間で言う所の24歳で、俺より年上だとははっきり言って思わなかった。
っつうか、あんな頼りない年上の姉ちゃんはいない。色気があるわけでも、無いわけでもなくて、少女のようで、女性のようで。

なんつうか、守りたくなるような。

「…もう、あんな無茶すんなよな」
俺はウィニエルの視線から逃れようと告げた。
このまま見つめ合ったら変な気を起こしそうだった。

でも、この後のあいつの言葉で俺は再び怒ることになる。

「大丈夫ですよ。天使は傷付けられたりしな……痛っ!?」
「………」
俺は無言のままあいつの両腕をきつく掴んで引っ張り上げる。
「グリフィン!?」
ウィニエルは目を丸くして俺を見上げた。
「痛いっ…もうっなんなんですか!? 放して下さい!」
薄いピンクの唇が抗議をするが、俺は放してやらない。
「………お前…殺すぞ?」
「こ、殺すって…物騒ですよっ…!」
ウィニエルは苦笑いを浮かべながら俺と視線を合わせる。

「……あっそ…」

「…え…ちょ、ちょっと…グリフィン…っ!?」

俺の顔の影がウィニエルの顔に掛かった。

「………」
「………」

影が去ると、俺とウィニエルは互いに見つめ合う。

ただ、軽く触れただけ。

ただ、軽く触れ合った唇。

ウィニエルは黙ったまま俺を見上げていた。

ただ、目を丸くして。

俺もそうだった。

俺も目を丸くしてた。

……こんなことするはずじゃなかったんだ。

「……あ…ええと…」
しばらくすると、ウィニエルが沈黙を破った。
「………」
俺はまだ黙ったままだった。
「……今の…何ですか…?」
ウィニエルは素っ頓狂なことを言う。
「…はぁ?」
「…今のは…?」
眉を顰めた俺を尻目にあいつは呆けた顔で首を傾げる。

全く、何て奴だよ。
ウィニエル、お前って。

…俺の変な闘争心に火が付いたのは言うまでも無い。

「…今のはー…キスって言うんだよ!」
「へっ? キス? んんっ!?」
俺はウィニエルの肩を引き寄せて、今度はがっちり互いの唇を重ねた。
「んんっ…ぐりっ…!!」
ウィニエルの柔らかい唇の感触が俺の唇から伝わってくる。

「………」

少しの間、俺達はそのまま動かなかった。
しばらく経ってもあいつの唇は何の抵抗もしないから、俺は自分の舌を少しだけ滑らせてやった。
「んむっ…やっ…!!」
ウィニエルは驚いて俺の肩を剥がす様に手をついた。
「…った…!」
あいつの不意の行動に俺の歯とあいつの歯が打つかって、歯茎に小さな痛みが走った。後に鉄の味はしないから切れたりはしてないようだった。
俺は直ぐにあいつを解放してやる。
「…っ…はあっ…はあっ…グリフィン!!」
俺が解放してやるとウィニエルは酸素を欲しがって、床に手をついて肩で息をし、その後で俺を睨みつけた。
「……わかったか?」
俺は首を傾げながら余裕なんてこれっぽっちもないってのに、不敵に笑って見せた。
「………」
ウィニエルは瞳に涙を溜めて、俺を睨む。

それでも、あいつは唇を拭い去ったりはしなくて。

「……わかんないか。もう一回するか?」
俺は悪乗りして告げた。
「やっ、わ、わかりましたっ! じゅ〜ぶんわかりましたっ!!」
あいつは今度は頬を膨らまして俺から視線をずらして、そっぽを向く。
「………」
俺は黙ったまま横顔のあいつを見つめていた。

ウィニエルの柔らかい昼間なら日の光に浴びて金に輝く飴色の髪、エメラルドの瞳、いつもは薄いピンクの唇。
今は少し赤みを帯びている。

俺はあいつの頬が徐々に赤くなっていくのを見ていた。

「…な、何ですか…?」
ウィニエルが俺の方に振り向いて訊ねる。
「……別に?」
俺はこう応えるしかなかった。
だって、お前を見つめるのは故意にじゃない。無意識の内なんだから。
勝手に俺の視界に入るお前が悪いといえば悪い。

「…そうですか…」
ウィニエルはそれだけ告げてそのまま黙り込んでしまった。

俺達の間に沈黙が再び訪れる。

数分後。

「………」
「………」

まだ俺達は黙り込んだままだった。

「…怒ってんのか?」
俺は沈黙に耐えられなくなって言葉を発する。
「………いえ…、あ…まぁ…」
ウィニエルがわけのわかんないことを口にした。
「…どっちなんだよ…」
俺はあいつに嫌われたかもしれないなんて考える余裕もないまま、気が付いたら口を尖らせて訊ねていた。
「…ええと…初めてのことだったので驚いてしまって…あっ、キスって言葉は知ってますよ? でも…その言葉しか知らなくって…何ていうか…その……」
ウィニエルは赤い頬を人差し指で軽く掻きながら口を濁す。
「? 何だよ、はっきり言えよ」
俺は首を傾げる。

刹那、俺は自分がしたことを改めて振り返っていた。

ウィニエルに、キスしたんだ、よな?

するつもりはなかったんだけど…したんだ、よな?

…同意も無しに。

「えっと…」
ウィニエルが先を話そうとする。
「い、いや、待て、ウィニエル。言わなくても…」
俺はウィニエルを制止しようとあいつの口を塞ごうと手を伸ばした。

けど、間に合わなくて。

「……嫌じゃなかったけど、突然でちょっと…驚いたというか…言ってくれれば良かったなぁと…」
ウィニエルはモジモジしながら告げる。
「アホか。んなもん、断ってからする奴がどこにいんだよ? 雰囲気だろうが」
俺はあいつの頭を軽く小突く。
「った。え? そうなんですか? でも…初めてのときくらいは聞いてくれても〜…」
ウィニエルは俺に小突かれた所を照れくさそうに撫でて、微笑んだ。

いつもの、あいつの笑顔だった。

俺の好きな、あいつの笑顔。

「…バーカ。本当お前って変な奴だよな」
俺は何故かあいつに触れたくなって、ウィニエルの頭を撫でた。
「…ふふっ…そうでしょうか〜?」
ウィニエルは俺に頭を撫でられると嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。これはいつものことだった。
戦闘が終わって、援護が上手く出来た時に頭を撫でて褒めてやるとあいつは喜ぶんだ。こんな所は子供みたいだ。

なんつーか、…か、可愛いと思う。

「……あ、もうこんな時間ですね。グリフィン、そろそろ休んでください。私帰ります。明日また来ますね」
ウィニエルは窓の外が真っ暗になっているのに気付き、立ち上がった。

「………」

俺は咄嗟に目の前の天使に手を伸ばした。

もう少し、一緒に居たい。
あと少し、一緒に。

「……グリフィン…?」
ウィニエルはベッドに座る俺を見下ろしている。
「………」
俺の睨みはあいつに効かないのはわかってたけれど、俺は黙ったままあいつを見つめた。
「…また明日。おやすみなさい」
ウィニエルの影が俺の顔を覆う。

「え……」

まるで、寝る前に親が子供にするそれ、だ。

額に柔らかい感触がして。


…俺は目を閉じた。


そっか、子供は俺の方か…。なんて妙に納得してな。

あいつは本当に不思議な奴だと思う。
さっきまで子供かと思ってたら、急に大人になっちまって俺を上手くあしらう。


次に目を開けたとき、あいつの姿は無かった。

「な、何だよ…今の…っ…・」
俺の頬…いや、顔全体が熱かった。

そのまま、俺はベッドに横たわり、腕で自らの目を覆って、今起こったことを冷静に振り返ることにした。ウィニエルの言った言葉を一つ一つ思い起こして。
「えっと…なんだっけ…キスは初めてってことはわかった。ラッキー…って俺はアホか…。その後…だな…」
深夜の静まり返った部屋に男の妙な独り言だけが静寂を乱していた。

あいつが言ってたことを思い返す。
思い返して振り返る。

…振り返る。

…振り返る。

「……嫌じゃなかったけど、突然でちょっと…驚いたというか…言ってくれれば良かったなぁと…」
ウィニエルはモジモジしながら告げる。
「アホか。んなもん、断ってからする奴がどこにいんだよ?雰囲気だろうが」
俺はあいつの頭を軽く小突く。
「え? そうなんですか? でも…初めてのときくらいは聞いてくれても〜…」
ウィニエルは俺に小突かれた所を照れくさそうに撫でて、微笑んだ。


「…って…何で俺、あいつの頭小突いてんだよっ!? 嫌じゃなかったって…初めてのときくらいって…どういう意味だっ!? ウィニエル!! ………だぁあああああっ!! 聞いとけば良かったっ!!」
俺は両手で頭を激しく掻き毟った。

あいつの言葉の意味がわからない。

何で照れくさそうにしてた?

あいつは…俺をどう思ってる?
俺はあいつをどう思ってる…?

あいつの一つ一つの行動が思わせぶりであっても、変に期待はしないでおくことにしてる。
妖精に聞いた話じゃ、あいつは誰にでも優しいんだと。
分け隔てなく、皆に公平に優しいから期待はするな。
…と言ってたようにそん時は聞えた。

けど、ま、ウィニエルのことはともかく、俺自身のことくらいはわかってる。でも俺はそれをあいつに向けて告げたり、自分でだって声に出したりはしない。
口にしたら、途端何もかも崩れそうで。
もう少しあいつとこのままで居たいんだ。


ふいに、キスしちまったけど。

不安は少し残るけど。


今口に出来る言葉は一つしかない。


「…おやすみ」


俺は部屋の明かりを落して目を閉じる。

『いい夢をみて下さい…おやすみなさい、グリフィン』

ウィニエルが眠りに就く俺を優しく見つめて微笑み、そう告げてから帰った気がした。


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*後書き*

ええと…何だか収拾つかないって感じです。たはー( ̄□ ̄;)
何を伝えたかったのかわからなってしまいました(爆)
多分出会いから恋する過程…(つうか、途中割愛してるし(汗))を書きたかった…のかなぁ?(爆)
何でキスしちゃったのかも書いてる方もわからないといふ(笑)

「贖い」の方でちょっと触れてるグリフィン×ウィニエルの初期?はこんな感じです。
後期になるとラブ度が上がって、「贖い」の方で触れたような二人に。
でも、ここでのグリフィン×ウィニエルは「贖い」とは違いパラレルなので…
同じウィニエルだけど微妙に違います。
ついてこれますかー!?(無理)

はは…(渇)

んで、諸々の設定?としては、ウィニエルはまだ半人前で、グリフィンのお陰で一人前になるっちゅー寸法です。

グリフィン…好きだなぁ…♪♪